【マレーシア縦断からシンガポール】2013僕達の3500km2人旅【#5】
※この記事は2013年のタイ・ミャンマー・マレーシア・シンガポールの旅を元に2019年に新たに書き起こしたものです。
初めての海外１人旅を終え、日本に帰国した僕は某公共放送の下請けの映像会社で働いていた。そこで当時の彼女、今の妻と出会い意気投合した２人は仕事を辞めて東南アジアの旅へと飛び出した。シンガポールに友人の多い彼女（今の妻）の希望でゴールをシンガポールに設定し、どうせなら縦断しようとミャンマーのタチレクからシンガポールまでタイ、マレー半島を縦断して、シンガポールに行く事にした。ただ、移動し続ける。そうゆうタイプの旅だ。2013年の2人旅の記憶。
#ペナン島観光とマレーシア縦断
タイのタオ島から奴隷船さながらの夜行船に揺られ、本島へ。そこからミニバスを乗り継いでマレーシアに入国した僕らはペナン島に到着した。
ペナン島は一応世界遺産となってる島だったので寄ってみたが、バンコクを出て以来ずっと田舎を旅してきた僕らには普通のただの都会的な街で、特に見所も記憶に残る事も無かった。マレーシアはイスラム系の国で、東南アジアでもちょっと雰囲気が異なった。あまり僕たちにフレンドリーな人は多くなく、結局マレーシアでの宿をほとんどインド人街に取るというちょっと変な感じになっていた。観光案内を頼んだタクシー運転手もインド出身の人で、マレーシア人とのコミュニケーションに僕らは終始馴染む事が無かった。都会的な街にはチェーン店がたくさんあり、とりあえず僕らは回転寿司屋でお寿司を食べた。タイやミャンマーでは歩いているとタクシーやトゥクトゥクが沢山営業をかけてきて、交渉をスタートする事ができたけど、マレーシアでは自分の足で歩くことの方が多かった。そういえば都会ってこうだったなって思い出した。
僕らはそそくさとマレーシアを縦断する事にして、クアラルンプールを目指した。そしてクアラルンプールもまた、僕らは終始馴染む事が無かった。マレーシアが悪いわけじゃ無い、僕らはあまりにも田舎に慣れすぎていた。僕らが都会でやる事と言えば、マクドナルドを食べること位しか無かった。そして僕は薄々気付き始めていた。ルートが逆だった。なぜなら次に向かう国はシンガポール。日本よりも都会で先進的な国だった。僕らの服装はすっかりくたびれていた。
#マレー鉄道で大都会シンガポールへ
最初の２時間くらい、マレー鉄道の旅は快適だった。その後すぐにエアコンは故障して車内の気温はぐんぐん上がった。そしてそれは最後まで直る事は無かった。汗だくの僕は耐えきれず、列車のつなぎ目でタバコに火をつけながら考えていた。これから大都会シンガポールに入ると言うのに、僕はサンダルに小汚い服装だ。おまけに汗だくだ。なんだかとても憂鬱だ。
ジャジャーン！僕の頭の中でまさにそんな音が鳴り響いた。シンガポールの印象はまさにジャジャーン！だった。田舎から初めて東京に行ったあの日のように、僕は小さく口を開けて高層ビルを見上げていた。そして先ほどまでの僕の憂鬱はすぐに吹き飛んだ。
シンガポールの人々はとても親切で紳士的だった、大きなバックパックを背負った小汚い僕たち２人にとても優しくしてくれた。そしてホーカーという大衆食堂が至る所にあったので物価が高い割に食事には困らなかったし、何よりチキンライスは美味しかった。マレーシアでマクドナルドばかり食べていた僕は、美味しすぎて3食チキンライスを食べ続けた。イスラム系の国はお酒を飲む機会が限られるが、シンガポールではビールも飲めた。タバコに厳しいイメージだったけど、逆にちゃんと喫煙所は沢山あった。ゴミ箱も沢山あった。とにかく都会なのに過ごしやすかった。
シンガポールの魅力は、とにかく不思議だった。そしてあらゆる面で完成されていた。アジアのヘッドクウォーターはとっくにシンガポールだったし、なにより街のインフラや導線にその強い意思があった。
シンガポールで僕らは普通の事をした。彼女の友人たちに色々案内してもらい、みんなでドリアンを食べて臭ーい！って笑ったり、トルコアイスを食べて笑ったり。動物園に行ったり、スターバックスで寛いだり。ショッピングモールでアップル製品を見たり。バスを乗り間違えて慌てて飛び降りたり。行く前と、行った後では不思議とシンガポールの印象は全然違った。結局とてもポジティブな場所だった。それでいて多文化が混じり合っているし、両親とか子供とか連れてくるのには最適だと思う。
こうして、僕らはチャンギ国際空港に到着してこの旅を終了した。バンコクを出発して、ひたすら北上。ミャンマーに入国して今度はひたすらに南下。そして南端のシンガポールまでやってきた。
ただそれだけだ。ただそれだけに意味があるのかと問われれば分からない。だけど、僕ら２人はただそれだけでも、ちょっとだけ、前より優しくなれた。経験の数だけが人に本質的な優しさをもたらすとするならば。
完